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記者紹介

吉崎 亮介

株式会社Carat 最高執行責任者 舞鶴高専専攻科、京都大学大学院 情報学研究科修了。CEDEC2016登壇。学生時代に3つの研究室を渡り歩き、画像処理、音声解析、制御工学、ロボット工学、進化型計算、機械学習を専攻。応用事例を踏まえ、機械学習とその魅力を配信します。

機械学習をマーケティングに活用する時代がきています。
本記事は、集客・販売促進・顧客管理・リピート向上を目指し、機械学習の活用を検討しているマーケターに向けた記事となっております。
以下の3つ項目について解説していきます。

  • マーケターのための機械学習ツール
  • マーケティングにおいて、機械学習が可能にしてくれること
  • マーケターが機械学習を活用するために知っておくべき3つのポイント

マーケターのための機械学習ツール

統計解析を専門にしないマーケターがプログラミングなしの直感的な操作で、機械学習を自身の業務に活用できるツールが開発されています。
日本マイクロソフトの機械学習サービス「Microsoft Azure ML」がその一つです。

このサービスは、プログラミングなしの直感的な操作で、機械学習モデルを作成することを可能にしてくれます。
「Microsoft Azure ML」以外に、さらに直感的な解析が可能な「Microsoft Power BI」も提供されています。

マーケターが自身の業務に機械学習を導入する障壁が低くなりつつあります。
「マーケターでも機械学習を活用できそう!」ということが分かったところで、次に、具体的に何ができるのかを見ていきましょう。

マーケティングにおいて、機械学習が可能にしてくれること

本記事では、「Microsoft Azure ML」が提供している一つの事例を紹介します。

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この事例では、レンタルバイク店の需要の予測を目指しています。(ここでは、回帰分析という手法を使用しています。)
需要を予測したい日の情報(天気、平日か休日か)や、過去の需要情報(データ)を使用して、その日の需要を予測しています。
SetA・SetB・SetC・SetDは、予測に使用する過去のデータを表しています。

15時から16時の需要を予測したいケースを例に挙げ、詳しく考えていきましょう。
15時から16時の需要を予測するために、どんなデータがあれば精度よく需要を予測することが出来るでしょうか。

過去の1年間(約300営業日)のデータ全てのするのがよいでしょうか。
それとも、過去直近(例えば12日間)のデータを使用するのがよいでしょうか。
一見、データ数が多い方が予測性能が高いように思われますが、性質が違う(例えば季節が違う)データを使用すると返って予測精度が下がってしまう可能性が高くなります。
例えば、冬の日の需要を予測するために、秋の日のデータを使用するケースを考えます。
秋は、冬よりもレンタルバイクの需要が多いと考えられるため、需要が多い秋の日のデータを使用すると、予測したい冬の日の需要を多く見積もってしまう可能性があります。
以上の理由から、精度が高い予測をするためには、持っているデータを全て使用するのではなく、SetA・B・C・Dのように、予測したい値と性質が似たデータを使用する必要があります。

では、このSetA・B・C・Dはどうやって決めるのでしょうか?
その答えは、「人間の頭で考えるしかない!」です。
機械学習のツールが用意されても、実は解析者が自身で考えなくてはいけない部分が多いのが現状です。
しっかりと機械学習を理解していないと、間違った解析をしてしまい、莫大な損失を産んでしまう危険性もあるのです。
最後の章では、マーケターが機械学習を活用するために知っておくべきポイントについて説明します。

マーケターが機械学習を活用するために知っておくべき3つのポイント

マーケターが使用可能な「Microsoft Azure ML」を紹介しましたが、このツールを利用する前に理解しておくべきポイントを説明します。
まず、Azure MLを提供する日本のマイクロソフトのパートナーマーケティングを担当する田中健太郎氏が「MarkeZine Day 2016 A.I.」に登壇された際のメッセージを紹介します。

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社内に十分な人数のデータアナリストがいない会社が,マーケティングに機械学習を活用するためのツールはすでに用意されています。
しかしながら、田中氏が述べるように、最低限機械学習ができる枠組みを理解することが必要になってきます。

マーケターが機械学習を理解していないと、何が問題なのかを以下に示します。

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ポイント1: 具体的な施策・解析に関するアイデアが思いつかない

何が出来るかを知っていなければ、機械学習をマーケティング業務に使用することはできません。
また、何が出来ないのかを知っていなければ、機械学習を使用する意志決定もできなくなってしまいます。
例えば、クリスマスの日の客数を予測したいケースを考えてみましょう。機械学習は過去のデータに基づいた予測を行います。
クリスマスの日に顧客行動に類似したデータを使用しない限り、予測性能は高くなりません。
予測性能を向上させるためには、十分なデータ数を確保しなくてはなりませんが、それらの技術的課題がイメージ出来ると、クリスマスの日の客数を機械学習を使用して精度よく行うという問題設定自体が実行困難であると判断がつくでしょう。

さらに、何となく理解しているだけでも、機械学習をマーケティング業務に使用することはできません。
Microsoft Azure MLの事例紹介(レンラルバイクの需要予測)の中では、以下の内容が書かれています。

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データ解析に使用するアルゴリズムは多くありますが、解決した課題に応じて、精度・理解しやすさ・効率などの観点からそれらを自分で選択しなくてはなりません。
つまり、自分が解決したい課題に応じて、自分で解析のフローまで完璧に組み立てることが出来る必要があります。

ポイント2: 解析を正しく行うことができない

前の章で、需要予測に使用するデータの具体例を用いて、使用するデータの重要性を説明しました。
使用するデータの理解だけではなく、解析結果を正しく理解する力も必要となります。
例えば、算数のテスト(足し算引き算から台形の面積の求め方まで)の点数と小学生の身長を図にプロットしてみると、身長とテストの点数は相関関係にあることが分かります。
しかしながら、ここで注意していただきたいことは、相関関係は因果関係を表しているわけではないということです。
算数を勉強すると、それだけ身長が伸びるわけではないことは、読者の方もすぐにわかるのではないでしょうか。
この例の場合、算数の点数は、身長ではなく、その裏にある算数の就学年数と関係がありそうだということは想像しやすいのではないでしょうか。
「算数を勉強するほど、算数の点数が伸びる傾向にある」と捉えるのが正しい考え方でしょう。

このような簡単な例だとすぐに分かりますが、現実の問題はそれほど簡単ではないでしょう。
正しく解析を行うことができなければ、解析を正しく行うことができないばかりか、莫大な損失をもたらす危険性すらあります。

ポイント3: 実行フェーズにまで至らない

得体の知れない解析から算出された結果を用いて、自身の業務の意志決定が出来るでしょうか。
また、自分が何となく理解できていたとしても、解析がデータの何を・どのように捉えているのかを上司に説明することができなければ、新しい施策を実行フェーズにまで至らないでしょう。
もちろん、会社や団体、解決するべき課題の性質によって状況は変わってきますが、納得感のある解析手法が求められるケースは非常に多いのが現状です。
機械学習ツールを導入したからといって、全てが解決するわけではなく、それを使いこなし、相手に説得することができてはじめて、機械学習があなたの武器になります。

おわりに

マーケターが機械学習を簡単に使用出来るツールが用意されている時代がきました。
しかしながら、マーケターがそれを活用するために、機械学習の勉強は避けて通れないのが現状です。
是非読者の方には、機械学習を正しく理解し、活用していただければと思います。